会長挨拶

外傷診療 - 限られた時間とリソース、限定的な科学的根拠の下、診療チームが診断と治療の“decision”を繰り返しながら展開します。
クオリティの高い科学的根拠は少なくても、私たちは常に臨床に生かすべく、それを知らなければなりません。そして、まさに診療チームが自らの能力を知り、限られた時間における適切な“decision” をすることこそ、外傷診療の中心のひとつであり、醍醐味です。
いま、いかなる判断にもとづいて外傷診療を行うかをしっかりと考え、そして、次の世代へと外傷学を展開することを決断すべく、本学術集会のテーマを“Decision for the NEXT” としました。
外傷は、外科、整形外科、脳神経外科、救急科などの基本領域において、より高い専門性を求める診療ではなく、重症外傷患者の病態、診断と治療に関わるひとつずつの要素、優先順位、時間的要素などを俯瞰して診療を構築します。日本外傷学会は、外傷診療と研究の専門家集団として、そのレベルを向上させるべく取り組むことが求められます。“ 外傷” のスペシャリストとして、次のステップへとすすむことによって、学術集会開催の意義が生まれます。
多くの外傷“ 同志” が一同に会し、歯に衣着せぬ議論をし、時間を忘れて語る、これまで多くの先達により積み重ねられてきた本学術集会の誇ることのできる姿です。しかし、今般の新型コロナウイルス感染症の影響により、これまでと同じく開催することがかないません。
外傷診療を熱く議論し、科学としての外傷学を追究し、その醍醐味を再確認することのできるよう、プログラム内容に応じた形を考えたいと思います。PC に向かって語るweb 開催であっても、広く公開されていることを忘れることなく、常に真摯であり、また、聴衆や言葉遣いなどの配慮は忘れずにお願いしたいと思います。
新たな開催方法による学術集会をみなさんとともに有意義なものとしたいと思います。
第34回日本外傷学会総会・学術集会
会長 久志本 成樹
東北大学大学院医学系研究科 外科病態学講座 救急医学分野